ホロコースト犠牲者を想起する国際デー(毎年1月27日)は“We Remember”を世界共通のスローガンとして、二度と繰り返されてはならない歴史について考える日だ。パリ・UNESCO本部でも毎年行事が行なわれ昨年は僕も出席した。今年は東京の駐日イスラエル大使館にて、犠牲者へのレクイエムとしてバッハの曲や、ホロコーストからの生還者である御年82のピアニスト・作曲家Cegledy氏と一緒に、強制収容所内で命を落とした演奏家が遺した曲を演奏した。
そもそもヴァイオリンという楽器とユダヤ人の歴史は密接に関わっており、そのような背景から自分がヴァイオリニストとして、またUNESCO平和芸術家として、イスラエルを取り巻く中東和平やホロコーストはぜひとも取り組むべき事柄であり、音楽の力が平穏を導くきっかけとなってくれることを願ってこれまで活動してきた。
ホロコーストによって亡くなった多くの若き音楽家たちの無念さを思うとき、僕らにできることはそれらの作品を出来るだけ弾き、多くの人に知ってもらうしかない。その願いを込めて僕自身のCDにも強制収容所で亡くなった作曲家の作品を収録した。
Cegledyさんは当時のことを多く語ろうとはしない。どれほど凄惨な世界であったかは体験した人にしかわかり得ない。生き証人と呼ばれる人がどんどん少なくなってしまった現在、今年のUNESCOのテーマは「誰がホロコーストの歴史を書き綴ってゆくか」と、真実を語り継ぐ難しさをこれからの世代に問いかけている。僕自身“芸術を通じた平和への貢献”という自分のミッションをより肝に銘じて今後も演奏しなければならない。