先日NHKでストラディヴァリが取り上げられた。美しく叙情溢れる音色が世界中の人々を魅了してやまないこの銘器のエピソードは古今東西尽きないが、今日は僕が持っているストラディヴァリの事を少し書こうと思う。1707年に製作された僕のヴァイオリンは最初にフランスの公爵家の手に渡った。当時からストラドには愛称が付けられる習慣があり、この楽器が星のようにキラキラと輝く音色を持つ事から“ステラ”と名付けられた。時に1789年、フランス革命が勃発。この公爵家は騒乱を逃れてオランダに渡り、共に“ステラ”も救い出されたが、その後は近年までこの一族によって大切に保管されてきた。演奏家の手には一度も渡らなかった“ステラ”は奇跡的に健康な状態で現代に生きている。そして2005年、縁あって僕の所にやってきた。“ステラ”にとってはより演奏される機会が増え、ようやく真の力を思う存分発揮出来る「日の出」となってほしい。300年の眠りを経て21世紀に目覚めた銘器、その音色はストラディヴァリの持つ女王の風格のみならず、フランス革命を生き延びた力強さと歴史の重みをも持ち合わせている。“ステラ”の音が一人でも多くの子ども達の心に留まってくれる事を願って、弾き続けたい。